こんにちは、ワンワンです。
日本人ならも「家は木造で」と思う人は多いのではないでしょうか。
そんな身近にある木造の家ってどんな構造をしているか知っていますか?
案外知らない人が多いと思います。やはり構造というのはマニアックな世界ですし、どちらかといえば家の「デザイン・設備」の良し悪しの方が注目されます。
そんな裏方であり、家が出来上がれば見えない縁の下の力持ちの構造ですが、地震や台風から家を守るだけでなく、私達の重さ(体重)、物や家具、電化製品を支えてくれています。
地震や物の重さを木で支えている木造の構造って考えるとスゴイと思いませんか。
実は木って私達が思っているより強いです。
木造の構造には大きく3種類の構造形式があります。
- 木造軸組工法
- 枠組壁工法(2×4工法、モノコック構法)
- ラーメン工法
今回は、一番採用されている木造軸組工法の構造に焦点を置いて話をしていきます。
この記事では、
- 木造軸組工法の構造
について、構造設計一級建築士のワンワンが解説していきます。
この記事の目次
木造軸組工法とは?

木造軸組工法とは、家の構造で一番日本で採用されている工法です。
柱、梁、床、筋交、構造用合板で構成されてます。
建物の重さ、人と物の重さは柱、梁、床で支えます。地震、風の力は筋交、構造用合板で抵抗します。このように構造の役割分担をしているのも特徴です。
近年の木造軸組工法は、
- 構造用合板+筋交で壁を構成する
- 床は構造用合板24mm以上を使用する
- 制震ダンパーを使用する
という家が増えてきています。一昔前のように梁の上に大引、根太、床という構成の根太工法は減ってきています。
今は910×910の区画に構造用合板24mmを貼る剛床工法と呼ばれる工法が多いです。この工法は床を強くするので、
- 地震や風の力による建物の変形を小さくなる
- 吹抜けを大きく取れる
メリットがあります。
ただ、そのメリットを活かすには、耐力壁の位置が重要になってきます。
何も考えずに耐力壁を配置すると床に大きな力がかかります。
- 耐力壁間の距離
- 上下階の耐力壁の量
が適正であるかどうかが重要となります。これを確認するには構造計算をすることが必要です。
制震ダンパーは、色んなメーカーが商品を出しています。
- 株式会社アイ・エム・エー GVA
- 住友理工株式会社 TRCダンパー
- 住友ゴム工業株式会社 MIRAIE
他のメーカーの制震ダンパーもあります。これはオプション的な要素となるので、無くても十分に強い家に設計することは可能です。
柱と梁、梁と梁同士の接合部は、腰掛け蟻継ぎ・大入れ短ほぞ差しという伝統的な接合方法にプラスして、羽子板ボルト等の鋼製ボルトで繋いでいます。

この接合方法が多いのでどの施工店でも対応できるというメリットはありますが、接合が集中する梁では断面欠損が大きくなるので、梁断面を大きくしなければいけないデメリットもあります。
近年では、断面欠損を小さくできて施工もしやすい金物工法が増えてきています。この工法は、柱や梁に接合用の金物を取り付ける工法となります。
大手ハウスメーカーの木造住宅はこの金物工法を採用していますね。
では次に木造軸組工法のメリット・デメリットを見ていきましょう。
木造軸組工法のメリット

メリットは、
- どの施工店でも対応できる工法であり、普及もしているので価格は他の構造に比べて安い
- 構造としての壁、筋交の移動が可能であり、柔軟性がある。(2×4工法に比べて)
- 狭小地でも建てやすい
となります。一つ一つを見ていきましょう。
①どの施工店でも対応できる工法であり、普及もしているので価格は他の構造に比べて安い
木造軸組工法は木造の家の基本となる構造です。昔からある伝統的工法を発展させた形なので、どの施工店でも対応できます。
そのため、色んな工務店、設計事務所を選ぶ幅が広がります。幅が広いということは、好きなデザイン、好みの趣向の家を選べて建てやすいです。
鉄筋コンクリート造の家であると、かなり工務店、設計事務所が絞られますが、木造軸組工法であれば選び放題です。
また、多くの施工店で工事ができるということで材料が多く流通しています。それは逆に言うと材料が安く手に入ります。つまり、家の価格が他の構造に比べて安くなります。
ただし、材料を良いものにする、サッシをトリプルサッシにする等のグレードをあげる事をすると価格は上がりますので、注意してください。
②構造としての壁、筋交の移動が可能であり、柔軟性がある。(2×4工法に比べて)
これは2×4工法(モノコック構法)と比べてですが、構造としての壁、筋交の位置を移動しやすい利点があります。
これは特にリフォームで発揮する項目となります。
リフォームで部屋を大きくしたいという事が出てきます。その時に構造としての壁や筋交の移動がしやすいので、リフォームがしやすいという事です。
2×4工法(モノコック構法)だと基本的に壁が構造体となるので、扉などの開口を設けたり、壁を移動させたりという事が難しいです。
将来のリフォームを考えると木造軸組工法の方が良いですね。
③狭小地でも建てやすい
木は軽いという利点があるので、狭小地に材料を運んで手組みで建てることが可能です。
例えば、道路が狭くてクレーン車が入らないところでも家を建てることができます。もちろん他の構造でも可能ですが、施工しやすさと金額のことを考えると木造がやりやすいと思います。
木造軸組工法のデメリット

デメリットとしては、
- スパンを飛ばすと梁断面が大きくなる
- 対応できる施工店が多いが、中には施工レベルの低い施工店もある
となります。一つ一つを見ていきましょう。
①スパンを飛ばすと梁断面が大きくなる
これは木造の特徴でもありますが、木造の梁や柱の接合方法で梁に断面欠損が生じます。そのため、梁のスパンを飛ばすと梁断面が大きくなっていきます。
また木造の梁はたわみによる不陸事故(床が斜めに傾く)があります。これは梁の架け方とたわみが原因となります。
そのため、梁のたわみに対して余裕を取るように梁断面を少し大きめにする等の配慮も必要となっています。
②対応できる施工店が多いが、中には施工レベルの低い施工店もある
家は設計すれば、終わりというわけではありません。工事が正確にできているかも大切になります。
木造軸組工法は多くの施工店が対応できますが、中には施工レベルの低い所もあります。そういう所に施工された家は、完成してから問題が出てきます。
- 雨漏り
- ドア等の色が違う
- フローリング等に大きな傷がある
などがあります。施工レベルの低いところに頼むと家が完成してから大変なので、色んな評判を見ながら選ぶことが大切です。
木造軸組工法はなぜ構造計算されていないのか

木造軸組工法を採用されるのは2階建ての家が多いです。2階建ての家で一般的な大きさであれば、建築基準法で4号建築物に該当します。
この4号建築物は構造計算が必要ありません。ただ耐力壁と金物の計算(壁量計算とN値計算)はしています。
「家の設計で構造計算しているよ」と勘違いされている方もいると思いますが、耐力壁と金物の計算(壁量計算とN値計算)は数ページです。
構造計算をしていれば構造計算書があります。その計算書は数百ページもあります。
これで構造計算をしているかどうかの見分けがつきます。
ワンワンの個人的な見解を言うと、構造計算をする方がより安全な建物になる可能性が高いです。
なぜ可能性という言葉を使ったかというと、構造計算を理解している人が構造設計をやる場合は問題ありませんが、理解していない人が構造設計をしている場合があります。
これは戸建て住宅での場合、構造計算を理解していない人が構造設計をしている可能性としてあります。
たまに構造計算書を見ることがありますが、中を見るとうーんと悩ましい計算書もあることは事実です。おそらく構造専門でない人が計算している可能性があります。
なるべく構造設計事務所や工務店、設計事務所の構造設計の担当者で構造計算をしてもらうように依頼することが大切です。
「木造軸組工法とは? メリット・デメリット」まとめ
木造軸組工法とは
- 木造軸組工法とは、家の構造で一番日本で採用されている工法
- 柱、梁、床、筋交、構造用合板で構成
- 建物の重さ、人と物の重さは柱、梁、床で支えます。地震、風の力は筋交、構造用合板で抵抗します。このように構造の役割分担をしているのも特徴
メリット
- どの施工店でも対応できる工法であり、普及もしているので価格は他の構造に比べて安い
- 構造としての壁、筋交の移動が可能であり、柔軟性がある。(2×4工法に比べて)
- 狭小地でも建てやすい
デメリット
- スパンを飛ばすと梁断面が大きくなる
- 対応できる施工店が多いが、中には施工レベルの低い施工店もある
構造設計事務所や工務店、設計事務所の構造設計の担当者で構造計算をしてもらうように依頼することが大切
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