こんにちは、ワンワンです。
今回はトラス構造とラーメン構造の応力計算問題をやっていきます。毎年出題されているわけではありませんが、出題可能性が高い問題となっています。
この2問については難しい問題ではありません。解き方をしっかりと覚えれば、簡単に解ける問題となっています。
特にラーメン構造の応力計算問題の解き方は、その後の全塑性モーメントの問題でも使いますので、マスターしましょう。
この記事では、
- トラス構造の応力問題解説
- ラーメン構造の応力問題解説
について、1級建築士のワンワンが解説していきます。
この記事の目次
トラス構造の応力問題

水平荷重120kNが作用した時、部材BC材の引張力は50kNであった。この時柱ABのA点の曲げモーメントを求めよ。ただし、梁は剛体とし、柱AB及びCDは等質等断面で伸縮はないものとする。
ヒントとして部材BC材の引張力50kNを使って問題を解いていきます。解き方手順として
- 部材BC材の負担せん断力の計算
- 柱AB材の負担せん断力の計算
- 柱AB材の曲げモーメントの計算
となります。
①部材BC材の負担せん断力の計算

水平力120kNが作用した時、部材BC材は材軸方向に50kNの力が生じています。まずは部材BC材の水平方向の力、つまり部材BC材の負担せん断力を計算していきます。
ここで使うのが三角関数ですね。図にある3:4:5の三角形の比を使いましょう。部材BCの50kNは斜め方向の力なので、
50kN × 4/5 = 40kN
となります。つまり部材BC材の負担せん断力は40kNとなり、下図のようになります。

②柱AB材の負担せん断力の計算
次に柱AB材の負担せん断力の計算をしていきます。水平力120kNに対して、部材BC材の負担せん断力が40kNと計算しました。
では柱AB材と柱CD材はの負担せん断力は、水平力から部材BC材の負担せん断力を差し引いた数値となります。
柱AB材の負担せん断力 + 柱CD材の負担せん断力 = 120 – 40 =80kN
そして問題文に条件が書いてましたね。柱AB、CDは等質等断面となります。つまり等質等断面という事は、柱AB材と柱CD材の水平剛性は同じとなります。
水平力は水平剛性に応じて鉛直部材の負担する力(水平方向の力)となります。今回は同じ水平剛性なので、柱AB材の負担せん断力 = 柱CD材の負担せん断力となりますね。
柱AB材の負担せん断力 = 80kN/2 = 40kN
となります。

③柱AB材の曲げモーメントの計算
柱AB材の負担せん断力を計算しました。この負担せん断力を使って柱AB材の曲げモーメントを計算します。
ここで重要なことは、「曲げモーメントの傾きがせん断力になる」という事です。これはなぜと言いますと構造力学の微分方程式についてやっていかないといけないので、そのようになると覚えてください。
まず柱AB材を見ていきましょう。B点はピンになっているので曲げモーメントが0となることがわかります。
下図のような応力図になることが想定できます。

そしてここで「曲げモーメントの傾きがせん断力になる」を使います。A点の曲げモーメントをMAとします。そして曲げモーメントは直線となっています。
(MA + 0)/3 = 40kN(柱AB材の負担せん断力)
MA = 120kN
答えはA点の曲げモーメント 120kN
曲げモーメント図は下図のようになります。

ラーメン構造の応力計算問題

2層のラーメン構造において、2階に水平力P1、R階に水平力P2が作用した時の柱の曲げモーメントを示したものである。下記の問題に答えよ。
- R階、2階、1階の梁のせん断力を求めよ。
- 水平力P1、P2を求めよ。
- 1階右側柱の軸力を求めよ。
- 右側の支点反力を求めよ。
①R階、2階、1階の梁のせん断力を求めよ。
まずは梁のせん断力を求める前に、梁の曲げモーメントを計算しましょう。ここで一つ覚えて欲しいのが、「柱梁節点において柱の曲げモーメントと梁の曲げモーメントが釣り合う」ということです。つまり、式で表すと
ΣM柱 = ΣM梁
となります。そして梁の曲げモーメントを計算した後は、梁のせん断力を計算します。この梁のせん断力はトラス構造の応力計算問題での重要事項「曲げモーメントの傾きがせん断力になる」を使います。
R階の梁のせん断力
R階梁の曲げモーメントを計算しましょう。柱と梁の曲げモーメントが釣り合うので、梁の左端は150kN・m、梁の右端も150kN・mとなります。
そして、釣り合う時は回転方向が逆になります。梁のせん断力は、
(150 + 150)/10 = 30kN
答えは、R階の梁のせん断力 30kN

2階の梁のせん断力
2階の梁の曲げモーメントを計算しましょう。柱の曲げモーメントは、上下階の柱の曲げモーメントを合計した数値となります。
柱の曲げモーメント 100 + 200 = 300kN・m = 梁の曲げモーメント
そして300kN・mが梁の曲げモーメントとなります。柱の曲げモーメントと梁の曲げモーメントが釣り合うため、回転方向は逆になります。梁のせん断力は、
(300 + 300)/10 = 60kN
答えは、2階の梁のせん断力 60kN

1階の梁のせん断力
1階梁の曲げモーメントを計算しましょう。柱と梁の曲げモーメントが釣り合うので、梁の左端は250kN・m、梁の右端も250kN・mとなります。
そして、釣り合う時は回転方向が逆になります。梁のせん断力は、
(250 + 250)/10 = 50kN
答えは、1階の梁のせん断力 50kN

②水平力P1、P2を求めよ。
水平力P1,P2が作用している時に負担するのは鉛直部材の柱となります。つまり水平力は柱の負担せん断力と言えますね。
水平力P2の計算
まずは2階柱の負担せん断力を計算しましょう。ここでも使うのが、曲げモーメントの傾きがせん断力になる」ですね。
(150 + 100 )/5 × 2(2階柱が2本なので)= 100kN = 水平力P2

水平力P1の計算
水平力P1は、1階柱の負担せん断力を計算するだけでは答えが出ません。まずは1階柱の負担せん断力を計算しましょう。
(200 + 250 )/5 × 2(2階柱が2本なので)= 180kN
層せん断力はその層より上の水平力の和になります。
1階柱の負担せん断力は1階の層せん断力となります。つまり、
P1 + P2 = 180kN P2 = 100kNを代入
P1 + 100 = 180kN P1 = 80kN

答えはP1 = 80kN P2 = 100kN
③1階右側柱の軸力を求めよ。
柱は鉛直方向の力となります。そして鉛直方向の力は、梁のせん断力しかありませんね。つまり、柱の軸力は梁のせん断力となります。
つまり1階柱の軸力は、R階の梁のせん断力と2階の梁のせん断力を足し合わせた数値となります。
1階右側の柱軸力 = 30kN(R階の梁のせん断力)+ 60kN(2階の梁のせん断力)
= 90kN
そしてこの柱は圧縮力となります。
答えは90kN(圧縮力)

④右側の支点反力を求めよ。
この支点反力も柱の軸力と同じです。支点反力は1階梁〜R階梁のせん断力を足し合わせた数値となります。
右側の支点反力 = 30kN(R階の梁のせん断力)+ 60kN(2階の梁のせん断力)
+ 50kN(1階の梁のせん断力)= 140kN (圧縮力)
答えは140kN(圧縮力)

「1級建築士試験 構造力学 トラス構造とラーメン構造の応力計算問題」まとめ
トラス構造の応力問題
- 部材BC材の負担せん断力の計算
- 柱AB材の負担せん断力の計算
- 柱AB材の曲げモーメントの計算
「曲げモーメントの傾きがせん断力になる」を使って、柱のせん断力を算出しましょう。
ラーメン構造の応力問題計算
- 柱梁節点において柱の曲げモーメントと梁の曲げモーメントが釣り合う
- 曲げモーメントの傾きがせん断力になる
- 水平力は柱の負担せん断力
- 層せん断力はその層より上の水平力の和
- 柱の軸力は梁のせん断力
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