こんにちは、ワンワンです。
今回は全塑性モーメント問題の第2弾となります。
第1弾を読んでないあなたはこちらをお読みください。
今回は崩壊荷重を求める問題を解説していきます。この問題は仮想仕事の原理という計算手法を使って問題を解いていきます。
仮想仕事の原理という言葉が出ると難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はそこまで難しくありません。
またこの範囲の問題は出るパターンが決まっているので、このパターンの解法をマスターすればOKです。
この記事では、
- 全塑性モーメント問題 崩壊荷重
について1級建築士のワンワンが解説していきます。
この記事の目次
崩壊荷重の問題
図1のようなラーメン構造に水平力Pを作用させる。この水平力Pを増大させた時に、図2のような崩壊形を示した。この時の崩壊荷重Puを求めよ。


このような問題を出た時に何から手をつけたら良いでしょうか。
この時に使う解法が仮想仕事の原理となります。これは崩壊荷重の時の変形を仮定して外力=内力、つまり釣り合い式を立てようという事です。
手順は、
- 崩壊荷重Pu時の変形を仮定する。この時の変形は回転角θで仮定する。
- 外力の仕事量ΣPδ (荷重×変形量)を計算する。
- 内力の仕事量ΣMθ(全塑性モーメント×たわみ角)を計算する。
- ΣPδ=ΣMθを解く。
となります。ではこの手順で解いていきましょう。
崩壊荷重問題の解き方
①崩壊荷重Pu時の変形(たわみ角)を仮定する。
ではまずはたわみ角を設定しましょう。
たわみ角はθと仮定します。長い柱と短い柱がありますが、長い柱のたわみ角を仮定しましょう。
下図のように仮定する事が出来ます。

短い柱のたわみ角はθ’と名付けています。こちらは後でθに変換します。
ではたわみ角θの時の水平変位を求めましょう。この時に使うのが微小角変位です。公式ですね。
微小角変位=たわみ角×長さ

これを使うと、下記のように水平変位を計算する事が出来ます。
水平変位はθ×2l=2lθですね。
次にもう一つのポイントは、長い柱と短い柱の水平変位は等しいという事です。つまり下図のようになります。

ここで短い柱を取り出して水平変位を考えると、
2lθ=θ’×l
θ’=2θ
とθ’がθで表す事が出来ます。

そして最後のポイントは柱のたわみ角と梁のたわみ角は等しいという事です。つまり下図のようになります。

②外力の仕事量ΣPδ(崩壊荷重×水平変位)の計算
次に外力の仕事量ΣPδを計算します。
PはPu、δは6θになりますね。
ΣPδ=Pu×2lθ=2Pulθ
③内力の仕事量ΣMθ(全塑性曲げモーメント×たわみ角)
そして内力の仕事量ΣMθを計算します。どこのMとθを使えば良いかというと塑性ヒンジ(図2の黒丸)の箇所を計算します。

ΣMθ=3MP×θ(柱)+Mp×θ(梁の左端)+MP×2θ(梁の右端)+3MP×2θ(柱)=12MPθ
④ΣPδ=ΣMθを解く
最後にΣPδ=ΣMθを計算しましょう。
ΣPδ=ΣMθより
2Pulθ=12MPθ
Pu=6MP/l
答えは6MP/l
別解
曲げモーメント図から崩壊荷重Puを求める事が出来ます。下図のようになります。

塑性ヒンジは柱と梁の全塑性曲げモーメントを比較して小さい方の部材に塑性ヒンジが出来ます。
柱が3MP、梁がMPであれば梁に塑性ヒンジが出来ますね。
ここで柱の柱頭曲げモーメントは梁の曲げモーメントと同じになっています。これは柱と梁の曲げモーメントは釣り合う事から柱の柱頭曲げモーメントと梁の曲げモーメントは同じ値となります。
次に柱のせん断力を計算します。
柱のせん断力Q=(柱頭の曲げモーメント+柱脚の曲げモーメント)/柱長さですね。
長い柱 Q=(3MP+MP)/2l=2MP/l
短い柱 Q=(3MP+MP)/l=4MP/l
ΣQ=2MP/l+4MP/l=6MP/l
崩壊荷重は鉛直部材、つまり柱で負担します。つまり柱のせん断力=崩壊荷重という関係が言えます。
ここでΣQ=6MP/l=Pu
答えは6MP/l
「1級建築士 構造力学 全塑性モーメント問題② 崩壊荷重」まとめ
- 崩壊荷重Pu時の変形を仮定する。この時の変形は回転角θで仮定する。
- 外力の仕事量ΣPδ (荷重×変形量)を計算する。
- 内力の仕事量ΣMθ(全塑性モーメント×たわみ角)を計算する。
- ΣPδ=ΣMθを解く。
柱長さが異なるときは、短い柱のたわみ角に注意しましょう。
基本的には同じような問題しか出題されていませんので、解法パターンをしっかりと覚えて解けるようにしましょう。
その他の全塑性モーメントの問題を読みたいあなたは、こちらをお読みください。


