こんにちは、ワンワンです。
前回は1級建築士試験に出題される地震力について解説しました。
今回は実際に地震力を出す計算をしていきます。これは構造設計の実務でもよく使うので、構造設計を目指すあなたは、ぜひできるようになりましょう。
また構造設計を目指さない人でも、地震力というのはこういう特徴があるんだなという事を理解すれば、試験対応としては十分ですし、実務においても役に立つ時があります。
日本という国は地震が身近なので、ぜひ地震力の計算の中身も理解していきましょう。
この記事では、
- 地震力の計算例
について、1級建築士のワンワンが解説していきます。
この記事の目次
地震力の計算例
3階建ての鉄骨造で下記の条件とします。
- 建物の高さは9m
- 各階の固定荷重と地震用荷重の和は2000kN
- 地盤は第2種地盤
- 地域係数 Z=1.0
- 標準せん断力係数 C0=0.20
階 | wi (kN) | Wi (kN) | αi | Ai | Ci | Qi (kN) |
3 | 2000 | 2000 | 0.300 | 1.455 | 0.291 | 582 |
2 | 2000 | 4000 | 0.600 | 1.206 | 0.241 | 964 |
1 | 2000 | 6000 | 1.000 | 1.000 | 0.200 | 1200 |
地震力の計算は、上表のようにまとめることができます。では各項目について説明していきます。
固定荷重と地震用積載荷重の総和 Wi
wiというのは各階の固定荷重と地震用積載荷重の和となります。
固定荷重は、柱、壁、梁、床などの構造躯体と外壁、内壁、床等の仕上げ荷重となります。
地震用積載荷重は用途によって異なるので、指定された荷重に床面積を乗じた数値となります。
この二つの荷重を足し合わせた数値が、各階の地震力算定用の重量となります。
そしてWiは各階の固定荷重と地震用積載荷重の総和となります。下階は上階の重量を支えるため、1階は2階、3階の重量を足し合わせた数値となります。
$$W3=w3=200kN$$$$W2=w2+w3=2000+2000=4000kN$$$$W1=w1+w2+w3=2000+2000+2000=6000kN$$
建物全体の重量に対する当該階から上階までの重量比 αi
このαiはAiを計算する時に使います。ではαiの計算はどのようにするのでしょうか。
αiは建物全体の重量に対する当該階から上階までの重量比となります。建物全体の重量というのは1階のW1となります。
当該階から上階までの重量というのは、各階のW1,W2,W3となります。
$$α3=\frac{W3}{W1}=\frac{2000}{6000}=0.300$$$$α2=\frac{W2}{W1}=\frac{4000}{6000}=0.600$$$$α1=\frac{W1}{W1}=\frac{6000}{6000}=1.000$$
地震層せん断力係数の高さ方向の分布を表すもの Ai
Aiは建物の高さ方向の補正係数となり、公式があります。
$$Ai=1+\left(\frac{1}{\sqrt{αi}}-αi\right)\frac{2T}{1+3T}$$
先ほどαiは計算したので、次は設計用一次固有周期Tを計算しましょう。条件は、
- 建物の高さは9m
- 鉄骨造
となります。固有周期Tの公式は下記となります。
$$T=h(0.02+0.01α)$$
鉄骨造のαは1.00となるので、
$$T=9(0.02+0.01×1.00)=0.27秒$$
あとはAiの公式に入れて計算するだけです。
$$A3=1+\left(\frac{1}{\sqrt{α3}}-α3\right)\frac{2T}{1+3T}=1+\left(\frac{1}{\sqrt{0.300}}-0.300\right)\frac{2×0.27}{1+3×0.27}=1.455$$$$A2=1+\left(\frac{1}{\sqrt{α2}}-α2\right)\frac{2T}{1+3T}=1+\left(\frac{1}{\sqrt{0.600}}-0.600\right)\frac{2×0.27}{1+3×0.27}=1.206$$$$A1=1+\left(\frac{1}{\sqrt{α1}}-α1\right)\frac{2T}{1+3T}=1+\left(\frac{1}{\sqrt{1.000}}-1.000\right)\frac{2×0.27}{1+3×0.27}=1.000$$
ここで
- Aiの1階は1.000になる
- Aiは上階に行くほど大きくなる
ことがわかります。
地震層せん断力係数 Ci
地震層せん断力係数 Ciは下式となります。
$$Ci=Z・Rt・Ai・C0$$
今はZ、Ai、C0は分かります。(C0は0.20となります)あとは振動特性係数Rtのみがわかりません。
- 固有周期T=0.27秒
- 地盤は第2種地盤

このグラフから振動特性係数Rt=1.0ということがわかります。では計算していきましょう。
$$C3=Z・Rt・Ai・C0=1.0×1.0×1.455×0.20=0.291$$$$C2=Z・Rt・Ai・C0=1.0×1.0×1.206×0.20=0.241$$$$C1=Z・Rt・Ai・C0=1.0×1.0×1.000×0.20=0.200$$
地震力 Qi
地震力 Qiは下式となります。
$$Qi=Ci・Wi$$
では計算していきましょう。
$$Q3=C3・W3=0.291×2000=582kN$$$$Q2=C2・W2=0.241×4000=964kN$$$$Q1=C1・W1=0.200×6000=1200kN$$
1階の地震力が最も大きくなることがわかります。
「1級建築士 構造 地震力の計算例と説明」まとめ
- Aiの1階は1.000になる
- Aiは上階に行くほど大きくなる
- 1階の地震力が最も大きくなる
1級建築士試験の構造で出題される地震力について知りたいあなたは、こちらをお読みください。
